「文春記者」1年目の日々
「特集班」は、いわゆる「報道」を担当する部署。40人以上の記者が所属する大所帯です。Aさんは入社したばかりの新人記者。普段はどんな仕事をしているのでしょう?
「週刊文春」配属と言われた時はどう思った?
志望部署だったので「やったー!」と喜んでいました。どんな刺激的な毎日が始まるんだろう、とワクワク、ドキドキしていました。
すごいポジティブだ! イメージしていた週刊誌の編集部と違った部分はある?
“週刊文春の記者”というと、激しく怖い方ばかりだと身構えていましたが、とても穏やかで優しい方ばかりで、すごく驚きました! あと、予想していた以上に出張が多いこと。「明日から、〇〇(遠方:例えば北海道や台湾)へ行ってね!」と指示が飛ぶスピード感は週刊文春ならでは。全国各地を飛び回ってるので、編集部は人がほとんどいませんね。
1週間の仕事の流れはどんな感じ?
木曜日にスタートして、火曜日が〆切です。木曜日の午前中にプラン会議があり、その日の夕方に今週自分が何について取材するか、デスクから連絡がきます。取材の内容によって1週間の動き方は全然異なりますが、まだ私には専門分野はないので、政治・事件から芸能まで、週ごとに全く異なるテーマで取材しています。
その中でも、印象的だった仕事、思い出に残っている仕事は?
たくさんありますが、一つはいわゆる“木原事件”です。木原誠二官房副長官(当時)の妻の元夫の“不審死”事件をめぐり、捜査への介入疑惑などを報じた一連のスクープで、私が携わったのは非常に短い期間でしたが、様々な方から「応援しています」というエールをいただいて、非常にやりがいがありました。
あれは誌面でも、WEBでも反響がすごかったよね。
あと、2023年札幌で起きた“ススキノ首狩り殺人事件”の取材も印象深いです。被害者について取材を重ねる中で「どこまでが報道すべきことなのだろうか」と自分の倫理観に向き合う機会が多かったので……。1年目から社会を揺るがす大事件の取材班に加わり、経験豊富な先輩と取材ができるのは「週刊文春」ならではだと思います。
休日や仕事の合間での息抜きにやっていることはある?
長めの休みは、基本的には東京から離れることで、リフレッシュをしています。夏は四国と地元・関西、次のお休みには香港に行きます。文化的な体験で言えば、博物館。東京都写真美術館は年間パスポートをゲットしました。あとは、おいしいものを食べること。最近は、変わった食べ物を食べることにハマっていて、エチオピア料理やウイグル料理屋、そして昆虫食やジビエ料理を提供するレストランにも足を運びました!
取材だけじゃなく、食においても好奇心がすごいね(笑)。最後に週刊誌の仕事に興味がある人に一言お願いします!
刺激が大好きな人には、ぴったりの職場だと思います! 毎週映画のような出来事が起こり、目まぐるしい日々を過ごすことができます。楽しいこともたくさんある一方、精神的にも身体的にもきついことも多いですが、少なくとも、社会人としてタフになれることは間違いないです!
スクープ×デジタルの現場
まさに今、私(村井)と一緒に働いてくれているBさんも、まだ入社1年目の新人です。ルーキーといえば、下積み……というイメージがありますが、デジタルの仕事はそうでもない。すぐに活躍できる土壌があります。そんな彼の日頃の仕事とは?
今の仕事内容について教えて?
サブスクリプションサービス「週刊文春電子版」の編集作業をしています。世の中を揺るがすスクープ記事を配信したり、音声番組「文春記者トーク」の台本を作成したり、定期的に開催される生放送イベントを企画したりと、デジタルならではの多岐にわたるお仕事です。
デジタルと紙で大きく違うところ、共通するところは?
紙の雑誌との大きな違いは、どの記事がどのくらいの数の読者に読んでもらえたのかが、数値化された形で明確に分析できるところだと思います。とことん取材を重ね、真実を明らかにしていく取材姿勢はデジタルも紙も変わりません。
毎週決まった発売日があるわけじゃなく、いつでも記事をアップできるのもウェブの特徴だよね。
そうですね。速報性の高い記事に関する作業は、スピード感のある対応を求められるので頑張りどころです。その分、フレッシュな記事が皆さんに読まれていると元気をもらえます。
印象的だった仕事、思い出に残っている記事はありますか?
印象的だったのは、企画から告知、そして当日の放送までを担当した生放送イベントの仕事です。デジタル編集部は少人数の部署だからこそ、ひとりひとりに任される裁量が大きいんですよね。今からふり返ると反省点も山ほどあるのですが、自分の頭で考えながら仕事をしたぶん、多くのことを学べた貴重な経験となりました。
「週刊文春」の仕事に興味がある学生に一言お願いします!
他社の新卒社員に比べて、本当に大きなスケールで仕事をさせてもらっているな、と感じます。就活生の頃は、将来について悩むことが多いと思います。さまざまな選択肢を悩んだ末、最初の職場として「週刊文春」編集部を希望してくれるのなら、これほど心強い仲間はいないと思います。一緒に仕事ができる日を待っています!
何が違う?
「週刊文春」と「文春オンライン」。それぞれの得意分野とは? どんな形で一緒に仕事をしているのか? 「文春オンライン」編集部のCさんに、わかりやすく教えてもらいましょう。
「週刊文春」と「文春オンライン」って何が違うの⁉︎と思ってる方も多いと思います。両媒体の関係について教えてください。
世間的には同じ媒体と思われがちですが、別の編集部として存在しています。今年7月から「週刊文春」編集部(以下週刊)と「文春オンライン」編集部(以下オンライン)のリレーションがより強固になりました。これまで別々だった取材班を「週刊」と「オンライン」で統合し、共に取材して記事を制作しています。
「オンライン」と統合することで、「週刊」は発売日の木曜日を待たず随時記事を出せるようになり、よりタイムリーな情報を読者に届けられるようになりました。一方「オンライン」も、創刊50年を超える「週刊」の取材ノウハウを学べるようになりました。
「文春オンライン」は生まれて約6年のウェブメディア。比較的若い記者が多く、ベテラン記者が多く在籍する「週刊」と共に仕事をすることは、「オンライン」の成長の一助になっていると考えています。
「週刊文春」発のコンテンツのWEB上での強みって何でしょう?
まずは“圧倒的な信頼度”です。カネとヒトをかけたクオリティの高い取材による記事で、高いPVを記録しています。一連のジャニーズ性加害報道、そして木原事件のような骨太な調査報道などが高いPVを達成したのも、読者の皆様からご評価頂いた証だと思いますし、とても嬉しく思っています。
さらに記事がSNSを通して拡散していくスピードも、他のメディアにはない強みだと思っています。「週刊文春」の発売日前日に「スクープ速報」をオンラインで公開しています。これは雑誌に掲載予定のスクープ記事のダイジェスト版を紹介する、というものです。想像もしなかった速さでSNSで拡散され、ヤフトピに掲載され、そして場合によっては新聞、テレビ…と波及していきますよね。
「週刊文春」編集部の雰囲気はどう見えますか?
とても明るく働きやすい部署だと思っています。私自身も「週刊」に6年在籍し、「オンライン」2年目を迎えました。「週刊」の中にいても近くの部署から見ていても、先輩記者、編集者が優しくフォローし、若い記者の成長や、やり甲斐を常に考えてくれていると感じています。
正直、拘束時間の長い部署ではありますが、まとまった休暇を年に3回とることができますし、忙しい中でも編集部員の体調を配慮したり、楽しく前向きに働けるように、デスクや編集長が仕事量を細かく差配しています。
じゃない!
豪華連載の魅力
スクープだけが「週刊文春」ではありません。豪華な執筆陣による連載も、魅力の1つ。毎週購読されている読者の方には、「××先生のエッセイが大好きで…」という方も多いんですよ。連載を支える「セクション班」のDさんに聞いてみましょう。
「週刊文春」セクション班の仕事について教えてください。
林真理子さんや宮藤官九郎さんなどのコラムを始め、小説・漫画の連載や阿川佐和子さんによる対談ページ、書評や映画紹介記事、インタビューページなど、“The雑誌編集者”の仕事が目白押しです。
書評で取り上げる本はどうやって決まるんですか?
各自、新刊を2、3冊持ち寄り、読みどころや取り上げる意義をプレゼンする書評会議があります。取り上げる本が決まったら、誰に評してもらったらおもしろいか、この人ならこの作品をどう読み解くか……を考えて依頼します。書評担当は、まずは書店に足を運ぶことが大事ですね。書店の平台や棚からはどんな本が売れているのか、どんなテーマが注目されているのかも見えてきますし、それまで自分が気づいていなかったジャンルや著者に出会うこともあります。
毎週2、3冊も! 年間ですごい読書量になりそう。特集班とは大きく異なるセクション班ですが、仕事の醍醐味はなんですか?
「会いたい人に会える」ことですね。人物インタビューページが充実しているので、自分の注目している作家や俳優、お笑い芸人、スポーツ選手など、多種多様なジャンルの方にすぐオファーできる良さがあります。また、GW、お盆、年末年始の年3回の合併号では、「文春将棋ウォーズ」や「文春ラジオ」など毎回1つのテーマで特集企画を組んでいます。特集テーマは部員からプランを募集して決めるので、自分の得意分野を活かせるチャンスでもあります。
いわゆる週刊誌読者世代だけじゃなく、若い世代に刺さるテーマや、尖ったカルチャーを紹介してることも多いですよね。
そうなんですよ!「週刊文春」というとスクープのイメージが強いと思いますが、連載ページも充実しているんです(実はページ数も特集記事より連載のほうが多かったり…!)。本や映画、カルチャー全般に興味がある方にはもってこいの部署なので、気になる方は書店で「週刊文春」をチェックしてみてくださいね。
デジタルファースト
最後に話を聞くのは、「週刊文春」を率いる編集長。2023年に就任した竹田聖編集長に、「週刊文春」のこれまでと未来をきいてみました。
竹田さんから見て、今の「週刊文春」編集部の雰囲気はどんな感じですか?
「文春オンライン」と「週刊文春電子版」に今まで以上に力を入れているので、忙しさは増していますが、みんな楽しそうに仕事をしてくれている……と私には見えています。勘違いでなければいいけど(苦笑)。トップダウンよりもボトムアップを意識して、新人のAさんの初プランを通したり、新人B君が企画したオンラインイベントにもすぐにゴーサインを出すなど、現場が積極的に提案してくれたことは、ほぼすべて、とにかくどんどんやってみようぜ!と言っています。
竹田さんが初めて配属された頃と比べて、変わったことも多いですか?
プラスとマイナスの変化があります。まずマイナスから言うと、悲しいかな、部数減ですね。私が初めて「週刊文春」に配属されたのは2004年で、まさにこの年、「週刊文春」は総合週刊誌の部数1位に10年ぶりに返り咲きます。以来ずっと1位の座は守り続けていますが、部数は半減しています。週刊誌全体の部数の地盤沈下が急速なんです。
いっぽうプラス面の変化は、「週刊文春」というブランド価値の向上です。かつて大手メディアでは、発売前日の記事を、政治家や警察に“これほんとですか?”とウラをとって、「~~であることが分かった」と先に書いてしまう、“スクープ泥棒”が横行していました。引用する際も「一部週刊誌が」で、「週刊文春」と明記されることなどなかった。社会部の警察・検察担当記者や政治部記者と情報交換と称して飯を食いに行っても、軽んじられていたなあと思います。
ところがスクープを書き続けた結果、今や大新聞の記者や政治家が、向こうから、会いたいと言ってくるようになった。大手全国紙を辞めて、「週刊文春」の記者をやりたい、と転職してくる人も増えました。まさに隔世の感があります。
すごい変化ですよね! 変化といえば、「週刊文春」のWEB活用もありますね。デジタルファーストに、という考えはどこからですか?
もちろん紙の「週刊文春」の読者がとても大切であることは論を待ちません。ただ、どれだけ良質のスクープを放っても、今から紙の雑誌を伸ばすのは、誰もがApple MusicやSpotifyで音楽を聴く時代に、レコードやCDだけつくって儲けろというのと同じ“無理ゲー”です。我々には素晴らしい音楽(=記事)を作り上げる力があるのは間違いないんだから、必ずしもCDショップで売らなくてもいいんじゃないの? もっと配信を使おうぜ、となるのは当然の発想でした。
ただし、本当の音楽好きに、レコードの味わい深い音が好きな方が沢山いるのと同様、本当の雑誌好きがいる限り、紙の雑誌もなくなりません。デジタルファーストで新たな稼ぎ方を見つけつつ、紙も維持する。この両輪で、日本中に面白い記事を届けたいですね。
ところで、「週刊文春」編集長という仕事は、楽しいですか?
楽しすぎる生活ですね! 日本一すごいスクープを取ってくる特集班の記者軍団、硬軟取り混ぜた魅力的な連載ページをつくるセクション班の編集者、そして原色美女図鑑などの美しいビジュアルを生み出すグラビア班。頼もしい仲間がいてくれるので、何の不安も心配もなく、ゲラを読んだり、取材や打ち合わせをして、おもしれぇなぁ~と言っていたらあっという間に1週間が過ぎます(笑)。ひとつの記事で、時に世の中が動き、アドレナリンが沸騰する瞬間を味わえる。なかなかない仕事です。
とはいえ、記者の仕事に不安をおぼえる方もいるのではないかと。「週刊文春」の報道って、ズバリどういう意義があると思いますか?
“王様は裸だ!”と言えることです。ジャニーズ問題しかり、東京高検検事長の賭けマージャンしかり、裏金を配って歩く法務大臣しかり、です。これっておかしくない? 権力者だからって許されるの!? ということに対し、なんの気兼ねも忖度もなく“王様は裸だ!”と言えるメディアがこの国に、ないよりもあったほうが良い、と思います。
もちろん、我々自身が権力になってしまっては本末転倒ですし、“正義感より好奇心”が我々のモットーなので、あまり偉そうなことは言いたくないですが。
「週刊文春」記者として働くなかで、成長できることはありますか?
どうでしょう? 私自身、長らく記者をやってきましたが、成長したかどうかはよくわかりません。でも度胸だけはついたかな。誰とお会いしても、特に物おじせず、冷静でいられるようになったような気はします。
ありがとうございました! 最後にお訊きします。竹田さんはどんな人と一緒に働きたいですか?
とにかく前向きな人。明るくても暗くても、口下手でもお喋りでもいいのですが、いろんなキツイことがあっても、常に前を向いて、まあどうにかなるやろ、と平気で笑っていられる人がいいですね。
取材を終えて
タブーを恐れない「週刊文春」らしく、編集部員のみんなにも「忖度」無しに話してもらいました。いかがでしたでしょうか?「週刊文春」がどんなメディアで、どういう人たちが働いているのか……明るく活気ある現場のイメージが、少しでも伝われば嬉しいです。
「週刊文春」は昔から新人が配属されることが多い部署ですが、ウェブメディアやSNSを通してニュースの力が拡がっている今、1年目からどんどんチャレンジできる職場になっていると思います。皆さんと一緒にお仕事できる日を楽しみにしています!