ナンバー局Number編集部所属。2013年文藝春秋に入社。広告局(現・メディア事業局)、翻訳出版部、文春オンライン編集部を経て2022年より現職。
ナンバー局Numberブランドビジネス部所属。他出版社を経て2006年入社。広告局(現・メディア事業局)で「Number」「文藝春秋」などを担当し2003年より現職。
NumberTVの
舞台裏。
01 Number×動画だからこその〝新鮮な表情〟
――NumberTVの撮影現場を見学したのですが、
とても多くのスタッフがいて驚きました。
雑誌の取材だと、編集者、フォトグラファー、ライターと3~4人のチームですが、番組の収録はプロデューサー、ディレクター、カメラマンの他にも音声、照明、美術、そしてそれぞれのアシスタントの方がいてかなりの人数になります。
これまでもYouTube用の動画を作ったり、トークライブの動画配信を行ったり、Numberは動画コンテンツを積極的に活用してきましたが、ここまで大規模な番組作りは珍しいですね。
――どういったきっかけで始まったプロジェクトなんですか。
NTTドコモから、「Numberと一緒にスポーツ番組を作れないか」とご相談をいただいたのがきっかけでした。動画配信サービス「Lemino」の視聴者を増やすために、強力なスポーツコンテンツを用意したいというニーズをお聞きしたんです。その課題に、Numberブランドビジネス部としてどう応えられるか。何度か打ち合わせを重ねた結果、2023年の秋ごろ、雑誌「Number」の色を全面に出す「NumberTV」というタイトルが決定しました。
Numberの名前を冠する以上、愛読者の信頼を裏切るものにはできません。Numberといえば迫力ある写真と美しいビジュアルに加えて、なんといっても、選手の人間性やスポーツドラマを深く掘り下げた記事が支持されていると思うんです。そこで、「NumberTV」でも、単なるゲストへのインタビューだけにとどまらず、恩師やコーチ、学生時代の友人など周辺取材を尽くしていくことで、見ごたえのあるドキュメンタリーにしようと思いました。
――さまざまな競技の第一人者が次々と登場するのは、
まるで「Number」の毎号の表紙を眺めているようです。
スポーツ総合誌として「Number」が築いてきた信頼とブランド力で出演していただけているのは、本当にありがたいですね。年24回の配信が決定していますが、今後も驚くようなトップアスリートの方が続々出演する予定です。
どの回も印象深いのですが、体操の内村航平さんが東京オリンピックでのまさかの予選落ちを語った#3は、取材や撮影の現場で驚きました。五輪当時はコロナ禍で内村さんへの取材が限られていたので、初めて明かされる話も多かったんです。
『Number』が届ける本格ドキュメンタリー番組。テーマは「挫折地点」。
雑誌「Number」が1980年の創刊から44年にして、初めて挑む映像ドキュメンタリー。トップアスリート本人へのインタビューを通して「挫折と復活」の物語に迫る。番組はNTTドコモの映像配信サービス「Lemino」にて全話無料配信中。
――番組のテーマ「挫折地点」はどのように決まったのですか?
限られたインタビュー時間の中で、映像として面白く、かつ「Numberらしい」深いコンテンツを作るにはどうすればいいか――そこは考えどころでした。成功を振り返るのはありきたりだし、物足りない。そこで、アスリートが「挫折」を核に自分のキャリアを真剣に振り返るというコンセプトをNumber編集部から提案しました。
その「挫折」を引き出すために、「Number」の象徴的な写真をたくさん飾ってアスリートに眺めてもらうスタジオセットや、福士蒼汰さんのナレーションとともに「Number Room」の扉を開く演出などは、テレビ番組やCMを長年作ってきた演出のプロの方ならではのアイディアだと思いました。
「すごい!動画のプロの発想だな」と思いましたね。僕たちが雑誌を作るときは、実際に記事を読んだ瞬間のアスリートの反応まではわからない。あとから感想や意見をきかせてもらうことはありますが。でも映像ならば、コーチへの取材動画を見てアスリートが驚くリアクションとか、名場面の写真を見て「この時、実はね……」と語り出すところとか、新鮮な表情をそのまま収録できる。そうしたナマの反応を、そのまま視聴者に伝えられるのが、とても新鮮でした。
あと、動画番組ならではの魅力といえば、音声、そして歌ですよね。クリープハイプの主題歌『インタビュー』は、NumberTVのために尾崎世界観さんが書き下ろしてくれたもので、すごくいい曲です。今はNumberTVでしか聴けない曲なので、ぜひ聴いてみてください。
02 編集者がいきなり番組プロデューサーに!?
――坪井さんは入社後、最初は深田さんと同じメディア事業部で、ブランドビジネスを担当。その後は、翻訳書の編集からウェブメディア「文春オンライン」の編集部まで、いろいろな部署を経験してきましたが、その経験は生きていますか?
ええ、最初にメディア事業部にいたので、「クライアントが求めていること」をきちんと汲み取ろうとする姿勢は学んだと思います。そこから編集者として培った「どうすれば起承転結ができて、面白くなるか」といった視点は、NumberTVでも役立っていますね。
坪井くんは、大学時代は映画サークルで学生監督をやってたんだよね。その経験も役立ってるんじゃない?
いやいや、学生映画は趣味ですから……。NumberTVの担当になったのも、いきなり編集長から「番組のプロデューサーをやってくれないか」と言われたからで、サークル経験はあんまり関係ないかも(笑)。しいて言えば「動画を見続ける体力」は学生時代に培ったものですね。
ただ、「Numberブランドを使って、雑誌以外のメディアで何かやりたいな」という思いは入社以来ずっと持っていたので、番組作りに携われているのは素直にうれしいですね。
03 企業が求めるコンテンツの「真の価値」
――今回はNTTドコモとの協業でしたが、
Numberというブランドを活用した他企業との事例は他にもあるんですか?
たとえば、コーセーがサポートしているアスリートを紹介する「KOSÉ SPORTS BEAUTY」というサイトにpowered by Numberとしてオリジナルコンテンツを提供しています。「Number」らしい読み応えのあるインタビューに加えて、フィギュアスケーターのメイク法やゴルファーのスキンケア法についても深掘りしています。
また、地方競馬や競輪、オートレースの投票券を購入できる、オッズパークの会員向けフリーペーパー「Doki Doki Magazine」も編集しました。以前はギャンブル攻略法的な内容が中心だったんですが、Numberが携わったときは「プロレスと競輪の二刀流の選手」や「73歳のオートレーサー」のノンフィクションなど、選手という人間に迫る読み物を提供して、評価いただいています。
ほかにも、アシックスとコラボして企画・開発から携わったアパレル「tokyo_edit」シリーズや、スポーツの聖地・国立競技場で開催するランニングイベント、松岡修造さん、池江璃花子さんなど一流のアスリートが子どもたちにスポーツを教える「Number Sports Academy」など、商品開発からイベント開催まで多岐にわたっています。
――出版社といえば、編集者の仕事をイメージする方も多いと思うのですが、
こうしたブランドビジネス、雑誌ブランドを生かした仕事の醍醐味とはなんですか?
たとえば雑誌「Number」を買って読んだことがない人でも「スポーツを取り上げている」「迫力のある写真」「ロゴが印象的」など、Numberに対しての共通のイメージがあります。1980年の創刊から44年かけて確立した「物としてある雑誌ならではのブランド価値」はそこですよね。
特にいま、企業の経営層の方には「学生時代からNumberを読んでました!」と言ってくれる熱心なファンの方も多い。そういった方の後押しで企画が実現に向かうことも少なくありません。
文藝春秋は大きくありませんが、名だたる大企業のプロモーションやブランディングにも携わることができる、ダイナミックで面白い仕事です。
編集者の仕事は個人商店的ですが、ブランドビジネスは企業どうしのプロジェクトなので、スケール面での醍醐味があります。でも「集めて編む」という点では、ブランドビジネスも本づくりも同じ編集なんです。ただ関わる人が多い分、意思統一がスムーズに進むよう、よりいっそう丁寧なやりとりを心掛けています。そんななか感じるのが、どの企業の方も「Numberに任せればきっといいものができるはず」という信頼を強く寄せてくださっていること。やりがいがありますね。
雑誌は校了し発売されれば一段落つきますが、ブランドビジネスはクライアントの事業に貢献するのがゴール。たとえばNumberTVでは、ほぼリアルタイムで視聴数などの成果が見えます。より多くの方に視聴してもらい、Leminoのユーザー拡大に寄与できるよう、番組のプロモーションや、数字の振り返りはNTTドコモとも密に連携しています。
――ブランドビジネスは、ある意味でコンサルティングのような、
メディアの力で企業の課題解決に寄与できる仕事なんですね。
企業とコラボしてブランドビジネスをする時は、お互い目標を決めて「何をやりたいか」「何ができるか」解像度を高めていくことが大切。ただ、忖度しすぎると面白くなくなってしまうので、編集者として、僕はコンテンツのクオリティを上げることに注力して、周りとの調整は深田さんがサポートしてくれています。
04 歴史があるからこそ挑戦できる
コンテンツのクオリティで妥協しないことが大事ですね。今はオンライン取材も発達しているし、写真もフォトエージェンシーに依頼すればカッコいい素材が揃う時代なので、デスクに座ったままで記事を作ろうと思えばすぐ作れてしまう。でも、たとえ30分の取材でも北海道や沖縄まで行って話を聞く、いい写真を撮る。そういった手間を惜しまないところがNumberらしさを支えているんです。
そうですね。甲子園特集だと、かつて名勝負を繰り広げた元高校球児にインタビューすることも多いのですが、今は地元で働く「普通のおっちゃん」だったりするんです。それでもきちんとお時間をいただいて、プロのカメラマンが写真を撮り、プロのライターが取材する。そうしたらすごく喜んでくださって、これまで話してなかったエピソードをサービスしてくれたり、「ちょっと飯行こか」と誘っていただいたり(笑)。そこでの雑談が次の企画の種になることも多いです。
良い記事をつくるための時間と手間は本当に惜しまないよね。
僕が雑誌「Number」のデスクになった時に「記事を作るときの予算ってどう考えればいいですか?」って先輩に聞いたんですよ。そしたら「使いすぎたら怒られると思うけど、怒られるまでは好きにやればいいよ」と言われて……。もちろん、一定の予算管理は必要なのですが、いい誌面が作れるなら遠方での取材や出張もどんどんやっていますし、今のところ怒られてはいないです(笑)。
――「Number」のクオリティを高めることで、ブランドビジネスの依頼も増える。
そうやって支え合っているんですね。この分野に興味がある新入社員に期待することはありますか?
SNSを利用したブランドビジネスはもっと強化したい点なので、SNSに親しんでいる若い世代にぜひ力になってほしいですね。今はNumberらしさを表現するのに、必ずしもNumberやNumber Webなどの自社のメディアでなくていい時代。SNSでも、動画でも、またはイベントでも、様々なコンテンツを選んで表現できる。可能性に溢れていて、とても楽しい仕事だと思います。
何十年もクオリティを保って刊行を続けてきた、信頼の蓄積があるからこそ、雑誌のブランドが確立され、いろんなコンテンツが生まれる舞台になっているのが今の「Number」。歴史があるからこそ、挑戦ができるんです。「面白いものを、本気で丁寧につくる」という強みを忘れず、新たな技術も取り入れて果敢に挑戦できる人と一緒に働きたいですね。
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私たちはこれからも
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企業の課題解決に挑む