INTERVIEW#02
第一営業部D・N
私の入社理由
菊池寛がつくった会社で働いてみたい!
文藝春秋を志望した理由は、北村薫さんの『六の宮の姫君』(創元推理文庫)を読んだことをきっかけに、そこに登場する菊池寛の作品や人柄に好感を持っていたからです。「この面白い人がつくった会社?……ここで働いてみたい!」という思いに突き動かされ、気付けば入社試験を受けていました。
もともと本は好きでしたが、大学では理系の道に進んだこともあり、最初から出版社に就職することを考えていたわけではありません。
ただ大学に入り活動範囲が広がったことで、「世の中には自分が知らないだけで、面白い本がこんなに沢山あるんだ」という事実に向き合う時間が増えました。そして同時に、地方出身であるが故に感じる都市部の書店との情報格差に、「出版社はもっとこうしたらいいのに」とか「こうしてほしい」という切実な想いも次第に強まっていきました。
入社の決め手となったのは、そんな一学生の言葉を真摯に受けとめてもらえた面接での印象が深く心に残っていたからです。
今の仕事について
現在までの経歴
- 2023.03月 入社
- 2023.04月 第一営業部(取材当時)
今の仕事について
「文學界」と「CREA Traveller」の雑誌営業を担当しているので、主にこの二誌の部数交渉を取次相手に行っています。また第一営業部ではノンフィクションや翻訳小説の書籍営業も担当しており、自分の担当銘柄の配本作業(各書店に何冊配本するかの検討)も業務の一つです。書店営業では独自フェアに参加したり、編集部と相談しながら著者のサイン会の施策に携わることもあります。
現在の仕事のやりがい
「なんで営業?」
入社前もその後も幾度となく聞かれた問いです。
本が好きなのに編集者志望ではなく、初めから営業志望だったことは確かに少々珍しい部類ではあったのかもしれません。
特に出版営業は、外からでは何をしているのか全貌が見えにくい仕事ではあると思います。実際に働いてみると業務も多岐に渡り、イメージ通りなこともあれば、「これも営業の仕事なんだ……!」とか「こんなこともしてるんだ」と驚いたことも一度や二度ではありません。
そんな営業での仕事ですが、例えどんなに良い作品でも「読者に見つけてもらう」ことが何よりも大切なんだということを日々実感させられます。POPや、各書店でのイベント提案も全てはその本を必要としている読者に届けるための手段の一つです。営業はそれらのアイデアを思い付いたまま自由にトライ&エラーできる部署です。上司からアドバイスをもらいつつ、いかにしてよりターゲット層以外の読者にも届けることができるか。案を出して実際やってみる、この繰り返しが楽しいです。
これからの目標や夢
私の目標は、全国津々浦々老若男女の読者が「自分好みの本を自力で見つける方法」を確立することです。
読書習慣のない家族や友人に、これまで何度か「本に興味はないのか」と尋ねたことがあります。結論からいうと、【あるけど、自分の読みたい本の探し方がわからない】という答えでした。確かにこれまで自動でおススメの本が提示される機能はあっても、How toを紹介してくれるツールはあっただろうかと考えるようになりました。
加えてこれまで刊行されてきた膨大な量の書籍の中から、自分が読みたい本を探し出すのは本好きでも骨が折れるものです。
それでも誰かが「こういうのを、読みたいな」と思ったときに、出来るだけ自分好みの書籍が探せるサイトやツールがあれば、普段本をあまり読まない人でも楽しめて、次も読んでくれるのではないか。読書だけでなく、本を探す過程も込みで楽しめる人が一人でも増えればいいなと思っています。
「出版営業」の仕事の
面白さは何ですか?
「出版営業」は大まかに雑誌営業・書籍営業・書店営業の三つに分けることができます。それぞれ業務内容は異なりますが、これまでの実績データを分析し、売れるための戦略を立てる面白さは共通しています。
その中でも特に一番面白いのは、書店営業です。なぜなら各地域、各店舗によって売れる本にハッキリと違いが出るからです。複数の担当エリアを持っているとその違いをより顕著に感じることができます。店内を見て回ったり、書店員さんとの会話で勉強させていただいていると、売れた理由を分析できるものもあれば、私には分析が難しいものも混じっていたりします。それだけでなく、書店チェーンによってそれぞれの得意ジャンルがあるため、同じ地域の書店でも売れ筋に違いが出るのも面白いです。新刊の説明をする際は、そうした得意分野を鑑みて、より売れ行きが伸びそうな書籍の販促のご提案をすることもあります。
営業側から見た、文藝春秋の書籍・雑誌の強みはありますか?
文藝春秋では佐伯泰英さんをはじめとする時代小説ものが強いのは勿論のこと、夢枕獏さんの「陰陽師」、円居挽さんの「キングレオ」、大山誠一郎さんの「赤い博物館」、北村薫さんの「ベッキーさん」等々シリーズものの連作短編集が多いのも特徴的かと思います。長編を読み切るのはまだ自信がないという人にも薦めやすい作品が多いのが強みです。
ノンフィクション系は「文春オンライン」や「週刊文春」、月刊「文藝春秋」での連載が書籍となった事件ルポルタージュやタレントのエッセイ、スポーツノンフィクションからアーティストの評伝まで。幅広いだけではなく、流行りばかりを追わない独自路線のものが多いのも文春らしいです。
翻訳小説も2024年で作家50周年を迎える巨匠スティーヴン・キングの骨太作品や、『イヴリン嬢は七回殺される』のような本格ミステリの王道設定を踏襲したものまで豊富に揃っています。
1週間の仕事の時間配分
オフの1日
文字通り、一日中小説を読んでいます。オフに限らず常日頃小説のことしか考えていないです。休みの日は手元が暗くなって夜になったことにようやく気付くぐらい集中しているときもあります。他にはよく歌手やアイドルのライブに行ったりもします。
文藝春秋を一言で
表現するなら
マイペースで
自由な街
忘れられない一冊
倉知淳『片桐大三郎とXYZの悲劇』
倉知淳さんの作品らしい、明るくて思わずクスッと笑ってしまうユーモアと、もの悲しさのコントラストが印象的なお話でした。面接官とこの作品の良さを共感し合った喜びも忘れがたい思い出の一つとなっています。