INTERVIEW#01
文春文庫部Y・R
私の入社理由
面接官とまた話したいと思えた
自分が楽しいと感じるものが生み出されている場所で働いてみたい、というのが出版社を志した大きな理由でした。
「好き」という感情が動機になっている以上は、自分を飾ったりよく見せようと背伸びをしたら即刻バレるだろうなと思い、出たとこ勝負で面接に挑みました。
そんな中、嘘偽りなく自分が好きな本や趣味、今までの人生について話したことを、一番楽しそうに聞いてくれたのが文春の面接官の方々でした。面接の前のガチガチの緊張はどこへやら。帰り道の「面接官の人とまたお話ししたいなあ」という気持ちが、入社の決め手だったと思います。
また、文芸とジャーナリズムの両輪に強みがあり、その両方を経験している方が多いことにも魅力を感じました。小説を編集したかと思えば、事件現場で記者として動き回ることもあるかもしれないということにワクワクしました。
今の仕事について
現在までの経歴
- 2023.03月 入社
- 2023.04月 文春文庫部
今の仕事について
主に文春文庫の編集をしています。著者との打ち合わせや、文庫ならではの「解説」の依頼。表紙のデザインを提案したり、帯のコピーにも頭を悩ませています。既刊本に重版がかかった時の印刷の手配も、ロングセラーが多い文庫では大切な仕事です。
現在の仕事のやりがい
一口に文庫本の編集といっても様々なケースがあります。自社の単行本の文庫化もあれば、近年では文庫書下ろしの作品も増えています。他社の単行本を文春で文庫化したり、既に絶版になったものを掘り起こして復刊することもあります。
書下ろし作品を担当する際には、著者と一緒に取材で作品の舞台を散策したり、アンソロジー作品を編集する際には著作権の整理に奔走したり、書籍によってやることは本当に様々です。
一冊一冊が全く異なる経緯で「文庫本」という形になっていくので、千差万別な本づくりに携われることは、今の自分にとって非常に大きな経験となっております。
日々、書店に行ってこの本面白そうだな、どんな経緯で書籍になっていったんだろうと考えながら、新しい企画のヒントを探しています。文庫編集部に入ったからこそ読むようになったジャンルがいくつもあることもやりがいの一つです。
これからの目標や夢
自分が「面白い、楽しい、美しい」と感じたものを様々な人の協力を得て一つの書籍に昇華させ、多くの読者に届けることが目標です。
この人に会ってみたい、原稿をいただきたいという新規の企画はもちろんのこと、別の切り口で売り出したらまだ見ぬ読者に届くのではないかという復刊や帯替えの企画にもチャレンジしていきたいです。最近では今野敏さんの『公安外事・倉島警部補』シリーズのカバーデザインを一新し、統一感がある形で多くの読者にさらに訴求すべく画策中です。
書籍のみならずあらゆるコンテンツに対してアンテナを張り続けていきたいです。コンテンツが溢れかえっている今、あえてじっくり本を読んでみようと思わせられるような書籍づくりには何が必要か、日々考えながら邁進していきたいと思います。
文春文庫ならでは!
と言える特徴は?
これは面白い!と思った作品や作家の方を、企画としてぶつけられるところです。
文芸作品もノンフィクション作品も、数多くのラインナップを取り揃えている文春文庫だからこそ、様々なジャンルに挑戦できる土壌があると思います。
ロングセラーの名作や映像化された話題作の新しい売り出し方を考えていくのも文春文庫ならではのことと思います。
最近では文庫を丸ごとオビで覆ってしまう、「全幅オビ」も勢いがあります。新たなオビを巻くことで書籍の違った魅力が引き出され、今まで届かなかった読者層にもリーチしています。
堀栄三さんの『大本営参謀の情報戦記』は約30年前に文庫化された太平洋戦争に関するノンフィクション作品ですが、情報過多の現代社会だからこそ学べる部分が多くあるとして新たなオビを作成しました。
学生時代の経験で
今の仕事に
生きていること
大学生時代は個人経営のお好み焼き屋さんでアルバイトをしていました。基本的にお店を切り盛りするのは、60代のおじいちゃんと80代のおばあちゃん、そして学生バイト1名。バイトとしてもお客さんとしても毎日のようにお店に行っていたので、一時は家族以上に一緒にいたと思います。コロナ禍でお店の経営が苦しいとき、ちょっとずつ客足が戻ってきたときなど、多くの苦楽を一緒に味わわせてもらいました。お店が暇なときは一緒にテレビを見たりお酒を飲んだりしながらずっとおしゃべりをしていました。
会話の中で接客のこと、飲食店のこと、昔の時代のことなど本当に多くのことを教えてもらいました。そこでの交流はいまだに自分の大きな糧となっています。
文藝春秋に入ってからは様々な年代の様々な職業の人とお話しする機会があります。お好み焼き店で、世代も感覚も全く違う人々と交流し続けられたことが大いに生きていると思います。
1週間の仕事の時間配分
オフの1日
本屋さんをぶらぶらしてから喫茶店でまったり本を読む日もあります。アウトドアが好きなのでキャンプに出かけたり、河川敷で焚火をすることもあります。フジロックにも有給休暇を取得して参加しました。徹夜で麻雀なんて日も……。
文藝春秋を一言で
表現するなら
ほどよい
古風さ
忘れられない一冊
村上龍『69 sixty nine』
欲望に対して忠実になるって実はとっても難しい。でもとっても価値があることをこの本に教えられました。当時の時代背景や文化、男子高生特有の馬鹿馬鹿しさをたっぷり感じられる底抜けに楽しい小説であり、「楽しさ」に対して本気になれるよう背中を押してくれた一冊です。