INTERVIEW#08
文春オンライン編集部I・R
「ちょっとした中毒性がある」WEB編集の魅力とは 「ちょっとした中毒性がある」WEB編集の魅力とは

私の入社理由

おもしろそうな会社だから

雑誌ジャーナリズムを志して……、と採用面接では答えていた記憶があります。立花隆さんの『田中角栄研究』に憧れていたのでそれもウソではありませんでしたが、より本音でいえば「おもしろそうな会社だから」でしょうか。もはやテンプレと化している「御社の社風に魅力を感じて」というやつです。
 月刊『文藝春秋』の最後のページに掲載されている「社中日記」には、社員の間抜けなエピソードや社内のハプニングが、サークルの「部誌ノート」のように毎月つづられています。毎日が文化祭の準備期間のような会社だな、と思っていた印象は実際その通りでした。

今の仕事について

現在までの経歴

  1. 2006.03月 入社
  2. 2006.04月 週刊文春編集部
  3. 2010.04月 文藝春秋編集部
  4. 2012.04月 週刊文春編集部
  5. 2014.07月 文藝春秋編集部
  6. 2017.07月 文春オンライン編集部

今の仕事について

文藝春秋が運営している月間平均3~4億PV(ページビュー)のニュースサイト「文春オンライン」の編集長をしています。配信する記事の内容を確認したうえで、より多くのPVを得られるために何ができるのか、そしてどうすればさらに売上を増やすことができるかを考える仕事です。社内外との調整をしつつ、日々試行錯誤しています。

現在の仕事のやりがい

創業100周年の文藝春秋にあって、文春オンラインが発足したのは7年前の2017年。いわば社内ベンチャーのような事業としてスタートしました。始まったばかりのころと比べれば規模は大きくなりましたが、まだまだ新しいチャレンジばかりですし、そもそもインターネットは日進月歩の世界です。
 したがって「なにをやるのか」「どうやるのか」も変化していくので、その都度仮説を立てながら工夫をしていくことが楽しいですね。成果が数字で表れるので、結果をきちんと検証できることもやりがいになっています。
 また、WEBニュースを編集しているとどうしても現場感が少なくなってしまうので、文春オンラインでは「移動編集部」という特集を立ち上げました。不定期で編集部員が地方に1週間ほど滞在して、ローカルだけど面白い話題を発信しています(私も石川県や島根県に行きました)。リゾートでも山奥でも、ネットさえ繋がればどんどん仕事ができるのはWEBメディアならではです。

これからの目標や夢

最近では当たり前すぎて「ワークライフバランス」という言葉を耳にする機会も少なくなってきましたが、かつての出版社といえば徹夜の連続で、「ワークライフバランス」の対極にあるようなイメージでした。
 ただ、私自身も子どもを育てるようになり、以前のような働き方は難しくなってきました。まわりにも共働きの家庭が多いです。自分でロールモデルと言ってしまうとおこがましいですが、「ワーク」も「ライフ」もよくばる姿を率先して示せればよいなと考えています。

紙とWEB両方の
編集を経験して
感じる違いとは?

WEB編集の世界でまず感じたのは、PDCAサイクルの圧倒的なスピードです。記事の反応をリアルタイムに計測することができて、それを分析したうえで、次の企画につなげていく。しかも、サイト全体では毎月500本前後、個人でも30本前後の記事を配信しています。このスピード感にはちょっとした中毒性があるのでは……と思ってしまうぐらいです。
 一方、WEBを経験して改めて感じるのは、パッケージとしての紙媒体の強みです。インターネットのニュースは、2~3日もすれば流れて消えてしまいます。そんな時代だからこそ、手元に残しておきたいこだわりのコンテンツを雑誌・書籍として刊行する意味があります。最近は、文春オンライン発の書籍やムックにも力を入れています。

どんな人と一緒に
働きたいですか?

文春オンラインでは、決められた仕事をミスなくこなすことと同じかそれ以上に、「仕組みを考える力」と「データを分析する力」を重視しています。
 最近、「これからの出版業はコンテンツビジネスだ」と言われています。
 時代や媒体が変わっても、良質な記事や書籍(=コンテンツ)をつくるという点に変わりはありません。一方、デジタル化にともなって、書店流通を通じて印刷物を販売するというビジネスモデルは大きく変容しました。コンテンツをつくった先の流れが大事になってきたのです。
 自分で編集したコンテンツをいつ、どのようなフォーマットで、どのような方法で、だれに対して、値段をいくらに設定して届けるのか。そのコンテンツ伝達次第で、売り上げや反響は大きく変わります。
 状況に応じた最適解を考えられる人、ときには仕組みやルールすら変えるという柔軟な発想を持っている人、それを楽しいと感じられる人と働きたいです。

ちなみに、文春オンラインの分析を担当しているデータアナリストの田島将太さんの以下の記事がとても参考になるので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

コンテンツ伝達」を担うのは誰か?――データアナリストが語る、Webメディア成長戦略

1週間の仕事の時間配分

オフの1日

息子との海釣りにハマっています。自然に没入することがリラックスにつながっているのかもしれません。

文藝春秋を一言で
表現するなら

遊びにも仕事にも
本気になる
人たちの集まり。

忘れられない一冊

村上龍『希望の国のエクソダス』

「この国には何でもある。ただ、『希望』だけがない」。作中の中学生の発言です。『文藝春秋』に連載されていたとき、私は高校生の読者でしたが、小説として現代社会が痛快に描かれていることに衝撃を受けました。

入社を考える方へのメッセージ

「文春オンライン」と
“私の好奇心”。

入社直後、当時の上司から「何事も面白がれることが大事だよ」という話がありました。それから十数年経ち、とても的確なアドバイスだったなと思いますし、社内を見渡すと「面白がる力」に長けた同僚がとても多いことを改めて感じます。
 いまから100年前、菊池寛は雑誌「文藝春秋」創刊の辞で「私は頼まれて物を云ふことに飽いた」と書きました。つまりは、「好きなテーマを」「自分のスタイルで」発表するために雑誌を立ち上げたのです。その根底には、「私が面白いと思う記事を届けたい」という信念があるのではないでしょうか。
 これは現在に至るまで受け継がれている文春イズムです。もちろん文春オンラインでも、各編集者が常にアンテナを張って企画を練っています(ちなみに、私は将棋が好きなのでファン目線の「将棋特集」を立ち上げました)。
 自分が面白いと思えないものが読者に受け入れられるはずがありません。その意味で「面白がる力」を具現化していくプロフェッショナルな役割が、私たち編集者の存在意義なのだと思います。